近年、急成長を続けるピックルボール市場では、多くの新興ブランドが誕生しています。その中でも今、プロ選手や業界関係者の間で注目を集めているのが「HIT Pickleball(以下HIT)」です。
HITは、まだ一般販売を開始していない段階でありながら、トッププロと契約し、独自の技術思想で話題を呼んでいます。本記事では、HITの特徴や開発背景、今後の可能性について考察します。
※本記事は、以下のインタビュー記事を主な出典として構成しています。
HITとは?──新興ブランドの概要
HIT Pickleballは、アメリカ発の新興パドルメーカーです。最大の特徴は「パドルのハンドル設計に徹底的にこだわっている」点にあります。
多くの既存ブランドがフェイス素材やコア構造の改良に力を入れる中、HITはあえて“手に触れる部分”であるハンドルに注目しました。
その結果、耐久性・剛性・フィーリングのすべてを高次元で追求した、これまでにない設計思想のパドル開発を進めています。
現時点では一般販売は行われておらず、主にプロ選手の使用とフィードバックを通じて製品改良が進められています。
発起人と背景──異色の創業ストーリー
HITを立ち上げたのは、以下の2名です。
- Turner Tenney(Tfue):世界的に有名なゲームストリーマー
- Brandon Anandan:元テニスコーチ・実業家
一見すると異業種に見える2人ですが、共通点は「競技としてのピックルボールへの本気度」です。
彼らは既存パドルに対して、
- ハンドルが壊れやすい
- 打感が安定しない
- カスタマイズ性が低い
といった不満を抱いていました。
「本当に競技者のためのパドルをゼロから作りたい」
この思いが、HIT誕生の原点となっています。
技術ポイント──最大の武器は“ハンドル設計”
3Dプリント×カーボン強化構造
HIT最大の特徴は、3Dプリント技術を活用したハンドル構造です。
素材には、カーボン繊維を混ぜたナイロン系素材を使用し、従来の木製・樹脂系ハンドルとは一線を画しています。
これにより、
- 折れにくい
- ねじれにくい
- 振動が安定する
といったメリットを実現しています。
側面補強による耐久性向上
ハンドル周辺にはカーボン補強が施されており、強打時の負荷にも耐えられる設計となっています。
エンドキャップの脱落やハンドル破損といった、競技者にとって致命的なトラブルを最小限に抑える狙いがあります。
テニス由来のカスタム思想
HITは、テニスラケットの開発思想を参考にしています。
複数の重量・形状・バランスの試作品を用意し、プロ選手の感覚を数値化して反映させる手法を採用しています。
この「プロ起点の開発」は、ピックルボール界ではまだ珍しいアプローチです。
プロ契約の意味──Johnson兄弟とのパートナーシップ
HITが一躍注目された最大の理由は、トッププロであるJohnson兄弟との契約です。
- Hunter Johnson
- Yates Johnson
両選手は、世界トップクラスの実績を誇るプレーヤーです。
彼らが、まだ無名に近いHITと契約したことは、業界に大きなインパクトを与えました。
実際の契約発表の様子は、以下のInstagram投稿でも確認できます。
Johnson兄弟は、HITパドルについて以下の点を評価しています。
- ハンドルの安定感
- パワーとコントロールの両立
- 長時間使用でも疲れにくい設計
プロが開発段階から関与している点は、HITの信頼性を高める大きな要因となっています。
市場展望と発売予定──2026年以降の動向
2026年2月8日時点では、HITのパドルは一般販売されていません。
現在は、
- プロ使用によるデータ収集
- 細かな仕様調整
- 製造体制の構築
に注力している段階です。
正式な発売時期は未発表ですが、トッププロ契約を背景に、比較的早い段階で市場参入する可能性が高いと考えられます。
価格帯についても未定ですが、開発コストや素材を考慮すると、プレミアムクラスになる可能性があります。
既存ブランドとの違い
大手ブランドとの比較
代表的な既存ブランドには、
- Selkirk
- JOOLA
- CRBN
などがあります。
これらは主に「フェイス性能」「スピン性能」「反発力」に重点を置いています。
一方HITは、
「ハンドルからパドル全体の安定性を作る」
という独自路線を選択しています。
差別化ポイント
HITの差別化要素は以下の通りです。
- ハンドル中心設計
- 3Dプリント技術
- プロ主導の開発体制
- 高い耐久性志向
これらは、競技志向プレーヤーにとって大きな魅力となります。
HITは定着するのか?
期待されるポイント
HITには、以下のような可能性があります。
- プロ品質の一般化
- 新しい設計基準の確立
- カスタム市場の拡大
成功すれば、業界全体の開発思想に影響を与える存在になるでしょう。
想定される課題
一方で、課題も存在します。
- 実績不足
- 価格の高さ
- 量産体制の安定性
特に「品質を保ったまま量産できるか」は、今後の最大の焦点となります。
まとめ──HITは“次世代パドル”の基準となるか
パドルの元巻きグリップを剥がしたことがある方なら、パドルのハンドル部分を頼りなく思う気持ちが分かることでしょう。
私もFRIDAY チャレンジャーの元巻きグリップが気に入らず、レザーのグリップに変更したのですが、ハンドルの構造に不安を抱いた者の一人です。
HIT Pickleballは、これまで軽視されがちだった「ハンドル」に真正面から向き合った、非常にユニークなブランドです。
トッププロと共に開発を進める姿勢、先進的な製造技術、明確な思想は、大きな可能性を秘めています。
今後、一般市場に登場したとき、HITがどのような評価を受けるのか。
ピックルボールファンとして、引き続き注目していきたいブランドの一つと言えるでしょう。


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