ピックルボールは「短い距離の素早い横移動」「方向転換」「前後の出入り(キッチン周り)」が多いスポーツです。だからシューズにもランニング用やバスケットボール用とは異なる「動き方に合わせた設計」が求められます。
ピックルボールシューズ、ランニングシューズ、バスケットボールシューズの違いをわかりやすく比較しました。さらにランニング/バスケシューズでプレーすべきでない具体的な理由をみてみましょう。
基本的な違い
ピックルボールシューズ
- 目的:コートでの短距離ダッシュ、素早い横移動、急ブレーキ、安定したステップをサポート。
- トラクション:アウトソールは多方向グリップ(横滑りを防ぐパターン)。
- サイドサポート:足首〜ミッドフットの横方向安定性が強め。
- ミッドソール:衝撃吸収と反発のバランス。反発性より安定性・接地感重視。
- 重さ:比較的軽量だが、安定性確保のためランニングシューズより重めのことが多い。
- ノンマーキングソールの有無:日本の場合、体育館でプレーすることが多いので、ノンマーキングソールが必要な場面もある。
ランニングシューズ
- 目的:前方への連続的な推進(長距離または中距離)。伸びやかな蹴り出しを助ける。
- トラクション:前方へのグリップ重視。底面パターンは直進的。
- サイドサポート:横方向サポートは比較的薄い(特に中〜長距離用)。
- ミッドソール:クッション性・反発性を重視(長時間の衝撃吸収)。
- 重さ:軽量化が進んでいる(レース用は非常に軽い)。
- 履き心地:かかと〜つま先のローリング(フォアフットの推進)を助ける設計。
バスケットボールシューズ
- 目的:ジャンプ、着地、急停止・急方向転換、接触プレーへの耐性。
- トラクション:多方向(特に屋内木床向け)の強いグリップ。
- サイドサポート:高めの足首サポート(ハイカット)や強いミッドフット固定。
- ミッドソール:着地衝撃吸収に優れるタイプや、ジャンプ向けの反発を併せ持つ。
- 重さ:比較的重め(特にハイサポートモデル)。
- ソールの硬さ:接地面が広く、沈み込み過ぎない硬めのソールが多い。
用途に合った設計の差(なぜ違うのか)
- 接地面と動きの方向性:ランニングは「前方向」の推進が主体。ピックルボールは「横」「斜め」「前後」へ瞬時に動く。だからピックルボールは横方向グリップと安定性が重要。
- 横ブレ抑制:ピックルボールではサイドステップや急停止が多いので、靴のサイド補強(トーションコントロール)が必須。ランニングシューズはこれが弱い。
- 摩耗とアウトソール:屋内のピックルボールシューズはノンマーキングで柔らかいラバーが良い。ランシューのアウトソールは屋内で滑ることがある。
- 足首と衝撃:バスケシューズはジャンプに耐える設計であり、接触にも強いが“踏ん張り”と“細かいフットワーク”で必ずしもピックルボールに最適ではない(重さや硬さがマイナスになることも)。
ランニングシューズでピックルボールをやるべきでない理由
- 横方向サポート不足:横ステップ時に足首が不安定になり、捻挫リスクが上がる。
- アウトソールのグリップ設計が合わない:屋内コートで滑る可能性がある(パターンが直線的なため)。
- 過剰なクッションが接地感を損なう:反応が遅れて一歩目の出が悪くなる。
- 摩耗の進み方が早い:ピックル特有の横擦り動作でアウトソールが偏摩耗しやすい。
- つま先の剛性不足:短距離の踏ん張りや急停止で靴の返りが弱く、不安定になる。
- ソール形状(ローリング設計)が邪魔:ラン用のローリングは方向転換で引っかかることがある。
バスケットボールシューズでピックルボールをやるべきでない理由
- 重さがプレーを鈍らせる:瞬発的な動きで疲れやすい。
- ソールの硬さや厚さが接地感を妨げる:細かいフットワークで不利になる。
- ハイカットは視覚上の安心感はあるが可動域が制限される:素早い低い姿勢への動きに不向き。
- 接触やジャンプ用の設計はオーバースペック:ピックルボールでは不要な機能で、重さ・硬さがデメリットに。
ピックルボールシューズを選ぶときのチェックリスト
- 用途(屋内/屋外):屋外用は硬めで耐摩耗性重視(ハードコート用)、屋内用は柔らかいノンマーキングが良い。
- フィット感:足先の余裕+ミッドフットのホールド感。靴ズレを防ぐパッド配置。
- 重量:軽すぎず、安定性を損なわない程度の軽さ。
- 耐久性:側面の補強や耐摩耗ラバーの有無。
実用的なアドバイス
- 試し履きは必須:軽くコート上で横にスライドするような動きを試してみると良い。
- ソックスも重要:厚手のクッション入りソックスはフィット感を変えるので、普段使うソックスで試す。
- 既に持っているランニング/バスケシューズでレジャー的なプレーはOK:ただし定期的に靴の摩耗や横ブレをチェックし、練習頻度が高いなら専用シューズに替えるのがおすすめ。
- メンテ:屋外→屋内へはソールの汚れを落とす(グリップ低下防止とコート保護のため)。
体験談
初めてミックスダブルスのトーナメントに出たとき、記憶に残っている選手がいた。その対戦相手の女性は恐らくピックルボール未経験者。ただし、その身のこなしからバレーボールの選手であることは間違いなかった。その女性が返球するボールのコースは甘く、勢いもない。ただし、どんな球でも拾いまくった。ロブだろうが、ドロップだろうが、キッチンにいてもベースラインにいても、必ず追いついて返球してきた。そのうち回転レシーブでもするんじゃないか、というほどの勢いだった。決定打に欠いた私たちのペアは、自滅する形で敗北してしまった。
表彰式で彼女に再開した時、彼女が履いていたシューズは無残な姿であった。両足とも側面はびりびりに引き裂かれ、つま先は穴があいていた。汚れていなかったから、まだ新しかったに違いない。7チームの総当たりだったから、試合数は6ゲーム。時間にして1時間ちょっと。それでも彼女のニューバランスのランニングシューズは耐えることが出来なかった。結局、私たちのペアが得失点差で優勝した。しかし、もし彼女の履いていた靴がピックルボールシューズだったなら、優勝していたのは彼女のペアだったに違いない。
まとめ
ピックルボールは「横移動」と「俊敏な反応」が命。ランニングシューズは直進性能、バスケットボールシューズはジャンプ・接触性能に特化しているため、それぞれの設計思想がピックルの動きと必ずしも合致しません。安全性とプレーのパフォーマンスを最大にするなら、ピックルボール専用(またはテニス/コートスポーツ用に近い)シューズを選ぶのがベストです。


コメント